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NEXTEPDesignの日々徒然

I winder why【黒の透明度による描画/光と闇の物語】から

‪アニメーション作品【 I wonder why 】公式‬(2012年制作)

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2012年11月01日(tomura当時artmic8neoのブログから)
【黒の透明度による描画/光と闇の物語】

 

例えば岩肌や砂漠の地面の『CGによる』描画で僕がよく使うのが黒の透明度を使った描画。
勿論、自然には一色に見えても目には一色ではないもの。
絵の具や色鉛筆の描画の場合は描き込む為、例えば『岩肌が灰色という固定観念』では描かない。
岩肌は実は多様な色彩をしてるし、単に『木』だって色鉛筆画を描く際に僕が最も重要視するのは青だ。
そう言う描画の仕方はある。
厳密に言うと、そういうものの見方、感じ方の問題だけど。
今回はそっち方面ではなく、『そのように見えれば良い』そう割り切って下さい。
僕はどちらの描画も好きだ。
ただどんな描画方法にも言える事がある。
それは物体はどのような物体も、陰影から成り立っている事だ。

ー光と影ー。
人間は太古の昔から闇を恐れ、光を求めてきた。
何故人は闇を恐れたか。
想像(イメージ)してみる。
電気も、炎もない時代。
そんな、『夜というものが闇に包まれていた時代』。
その闇は、部屋で明かりを消す程度の闇ではない。
自分が目を開けているのか、閉じているのか、それすら解らない。
そんな闇だろう。
そんな闇から、捕食動物が自分を狙っているんだ。
そう、古代に於ける『暗闇』とは即ち『生命の危機』であったことは想像に難くない。
そう言う状況の中、古代人は現代人とは全く違う価値観で夜空の月を見ていた事だろう。
やがて、明け方になり、地平から太陽が昇って来るんだ。
それは、熱い血の通う時間だったに違いない。
だから古代宗教は大概太陽神を奉るものが多い。
光と影の伝説はそんな時代、いやそれ以前に遡ると僕は思っている。

その光と影。
それを手に入れたいが為に、探求者はデッサンをする。
デッサンは形をものにする為だけではないと思う。
光が最も当たるのはどこか。
直接光、忘れてはいけない反射光etc。
探求者はそれを手に入れたいんだ。
光と影を操る為に。
その向こう側に質感が生まれる。

なんて大袈裟に描き始めたけど、勿論僕などはそんなたいそうなものではない。
ましてやデッサンに関しては探求者ではない。
ただ要は陰影だけで『らしく』描ける場合もあるよ、というのが今回のテーマ。
つまり使う色は下地の色と、影を構築する黒の2色だ。

まず、下絵をざっくり描いてみる。
こんな感じだね。

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じつはこの作品中、このカットは最後まで構図が決定出来なかった。
どうも自分の頭の中で決定出来なかった。
実際にエジプトやギリシャレリーフをいろいろ見て何故かなと思っていた。
そしたら、僕が欲しいと思ってるのはダビンチ以前なのかもしれないって気付いた。
そう遠近法だ。
ダビンチ以前の絵画には遠近法がないらしい(厳密に言えば存在はしていたが確立されていない)。
それがまず一点。
もう一つはカメラワーク(笑)、いや構図だ。
でもここではカメラワークという言い方をした方が解り易い。
つまり横、fix、定点カメラ。
これでデザインすると、古代遺跡っぽく見える。
いや、スサノオや過去作品でそんな事は解ってるはずだったけど、再発見だった。
とにかく下絵が出来た。


この下絵の上に一枚レイヤーを追加して黒(ブラック)をべらっと零す。
真っ黒。
透明度を調節する、下絵が見える20〜30%,好みで良いと思う。
消しゴムで光の部分を消す。
色で描画をしません。
消す。
消しゴムで描く。
足し算の描画ではなく引き算の描画だ。

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何とも貧弱だけど、少なくともこれが平面ではなくレリーフである事のガイドラインにはなる。
では同様に、
更にレイヤーを一枚足す、透明度を調節、20〜30%。
今度は引き算ではありません。
上の写真では光の反射部分を『消しゴムによる引き算』で描きましたが、次は影の部分を『筆による足し算』で描きます。使う色は黒(ブラック)。

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影は深さがある。
レイヤーをもう一枚足す。透明度20〜30。
更に深い影を描画。
筆の透明度の調節はここでは使いません。
レイヤーの透明度です。

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レイヤーをもう一枚足す。透明度20~30。
今度は足し算と引き算の両方。


筆(ブラック)と消しゴムを使って古代文字を書く。

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他の誰にも理解されなくていい。ただ僕は大抵読めるんです(笑)。
例えばこの文字

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(◎)は『ここに記録する』とか『そうであった』『これを伝える、語り継ぐ』などの意味を持っています(笑)。
それで僕はおおかた解読出来ます。
デザインは、、なにしろもっとやりようがあるだろうけどね(笑)でも急ぎでやる必要があるわけだし、これはこれでいいのです!(笑)

仕上げにレリーフ全体にかかる影。
それではこのレリーフの周囲何mメートルにどのような物体があるのだろうか。
想像してみる。

砂漠にポツンと置いてある訳ではない。
これは遺跡の中に大量にあるレリーフの中の一枚なのだ。
もしかしたらこの遺跡はアンコールワットのように、植物に絡まれているだろうか。
使用目的は何だ?
もしかしたら、このレリーフを前に酋長が民に説教をするのかもしれない。
それは月夜の夜、僕たちの知らない植物の豊穣を祝う儀式なのかもしれない。
その月夜の夜、この遺跡には一斉に火が灯され、闇である筈の空間は賑やかしくも音静かに、荘厳な存在感を放つのかもしれない。
ならばこれら一つ一つの物語を語ったレリーフは、教典という事になろうか。
それとも教科書か。
いずれにせよ物事、歴史を語り継ぐ為のツールなのだろう。
このレリーフに民の注目を集めるには、もしかしたらこのレリーフの前には石の灯籠があるのではないだろうか?
このレリーフだけじゃない、横並びに年代順に配置されたレリーフ夫々の前に石の灯籠が配置されている。
酋長が民にお話をする順番に応じてその灯籠に火が灯されるに違いない。
『我々はどこから来たのか、知る者は最早いない。』
重い声で酋長が語り出す。
『我々はなぜここにうまれたのか、どこへ向かうのか。教えてくれる者もいない。』
民は低いハミングをしながら酋長の話に耳を傾ける。
『しかし記憶の底で呼びかける。我々は覚えている。母の胎内にいたころの物語を。それは壮大な物語。今宵我々は月の夜に集いその物語を語り継ぐのだ。人は目覚めた時、何も持たずに生まれいでる。それは彼ら、つまり我々の始祖とて同じ事。手に握るは母親の愛のみ。名前すら持たずに生まれて来るのだ。今宵我々は仮に彼らの名前をアダムとイヴと呼ぶ事にしよう。。。。。』
大木をくり抜いた物に皮を張った巨大な太鼓が打ち鳴らされる。

レリーフ全体にかかる影。
それがどのようなものかイメージ出来た。
そんな風に想像しながら描くとおもしろい。
さて、先の絵にレイヤーを同じように足して仕上げです。
レリーフ全体にかかる影はどのような角度か、イメージは出来る。
それを黒で描きます。
ワンツースリーでいきますね。

レイヤー一枚追加。

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レイヤー二枚目追加。

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レイヤー三枚目追加。

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勿論、追求するならばこの先更に進めてもいいし、修正を繰り返しても良い。
状況に応じて。
これはあくまで僕のやり方であり今回なのだから。
描き方なんて無数にある。それこそ星の数ほどね。
そう古代人も見上げたであろう夜空の星の数ほどね。
どの星が正解などということはない。
僕らは星空の旅人なのだから。

 

 

(おわり)

『I wonder whyについて』

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(by Tomura)