ベール

画材を買いに街へでた。

画材店は良い、希望に溢れている。

絵の具が好きだ。

手を汚して描くのが好き。

いつだったか、はじめてパソコンを買った。

それまで頑に必要ないと思ってたのに。

はじめてコンピューターで絵を描いた時、こんなに描きにくいんじゃ表現なんて出来ないと思った。

だけど、作りたいものがあったのでがむしゃらに頑張ったら、コンピューターで描くのが好きになった。

コンピューターで絵を描く事は、僕に仕事をもたらした。

とても楽しい、それはそれはエキサイティングな日々だった。

食えない崇高な画家だったのに、いつの間にかプライドを捨てた食える職人になったのではないかと思う。

職人を馬鹿にしている訳ではない。

職人であればまだ良い。

自分が何者なのか解らない。

醜くなった。

求められているのは腕なのか、それとも心なのか。

それは本当にお前のしたい事なのか。

久しぶりに、絵の具で絵を描く為に町へ出た。

画角を決めるのは腕ではない。心だ。

街は歩行者天国で賑わっていた。

面白そうなパフォーマンス。

でも僕はノーフィーリング。

僅かな心をこんなとこで使ってたまるか。

傷一つ付けず、シミさえつけず、持ち帰る。

泥んこになりながら、昔のように描くんだ。

(by Shiro)

イラストは2010年 『muumuu the clown』