刻印
(イラスト : 2012年2月15日描画)
2011年の3月11日。
あれ以上の衝撃は、自分の人生の中でいまだかつて無い。
あまりに多くの人が姿を消した。
あまりに残酷だと思った。
当時はあちこち地方を巡る仕事をしていたから、勿論波に飲まれた地域も訪れた事はあったし、一期一会とはいえ名刺の交換をし、酒を交わした人もいたはず。
一期一会だっか、といまでも思う。
今でもこの先の言葉は出てこない。
何を話していいか解らない。
ただ、その日の前の鳶の飛ぶ、陽だまりの日を覚えている。
潮の香る町を覚えている。
ひたすら待った駅を覚えている。
しかし全て朧げ。
「以前」と「以降」。
そのような感覚だけがはっきりと刻印されたかのようだ。
(by Shiro Tomura)